人生を懸けてきた推しが…
25歳一人暮らし 派遣の手取り14万円 副業で30万 貯金残高5万円
毎月の収入はほとんど推しのために使っている
そのことを後悔したことは一度も無い――。
時間も、おカネも…“推し”にすべてを捧げてきた女性が推しの辞めた真相を追うアイドルサスペンス漫画「推しが辞めた」。現代における「推し活」のリアルと闇が赤裸々に描かれ、SNSを中心に大きな話題を集めている。
———- 主人公のみやびは、25歳のデリヘル嬢。推しは「ボーイズグループ」のミクくん。私にとって、ミクくんは世界のすべてだった。ファンを大事にしてくれる彼のためなら、いくらだって稼いじゃう。でも、人生を懸けて推してきたミクくんは、ある日突然脱退した。なぜ? どうして? その理由を追い始めた私は、ある「禁忌」を知ることになる――。 ———-
本記事では、11月18日に単行本第1巻を上梓した作者・オガワサラさんに作品の構想を聞いた。
自分がハマるわけない! そう思っていたけれど
――本作のテーマは「推し活」。「好き、応援する人・もの」を昨今は「推し」と呼び、推しに没頭することを「沼にハマる」と表現することもあります。オガワサラさん自身、沼にハマった経験はありますか? 昔からオタク基質で、アニメ漫画や2.5次元舞台が好きだったんですが、ある時男性アイドル沼ハマりました。これはあるあるだと思うんですが、自分がハマるわけない! と思っていたものほどハマると深くハマる所があると思います。
また、学生時代美術系でオタク基質の人が多かったのもあり、周りも色んな沼にハマっている人達で面白かったです! 仲の良い友達もみんな何かしらの沼にいて楽しそうです。
――「推しが辞めた」はどのようなきっかけで構想を得たのでしょう。
きっかけは応援しているグループで脱退メンバーが出たことでした。そして、漫画をいざ描くぞ! となった時に何を1番描きたいか…と考えた時に「推し」と「オタク」の関係を一番描きたい…! と思い「推しが辞めた」の構想をしました。推し文化って日々変わっていると思うので、漫画という形で残せるのも有難いなと思っています。
推し活の「リアルな声」
――「推しがいない人生とか考えたことがないし考えたくないもん」「趣味とか無い人ってなんのためにキツイ仕事してんの? って思っちゃうわ」これらの台詞に共感する人も多いと思います。本作でのこうしたリアルな声はどのようにして生まれているのでしょう。
これは本当にオタク友達とよく言っている言葉です(笑)作中のセリフや行動も割と周りの友達や自分を参考にしています。オタクって語彙が豊富でとても面白いし、話してて楽しい人が多いです。また、推しを通して様々な人と仲良くなれるのもオタ活の醍醐味だなと思っています。オタクじゃなかったら仲良く無いよね~って子とずっと仲良くさせて貰えてるので、推しには感謝しています。
――推し活仲間のなかでも禁句的な「貯金」や「老後」の話題。推し活に卒業や限界はあると思いますか? これは正直あると思います。貯金は大事です。推しは老後の面倒見てくれないですから…! 一生寄り添えるような素敵な推し活があったら良いですけど、それも分からないので、いざ振り返った時に後悔しないような推し活をして欲しいと思っています。
推し活は楽しくないと意味がないと思っているので、「楽しい<きつい」になってしまった時は身の振り方を考えないといけないと思います。
苦しみながらオタクをする人は減って欲しい
――推しに積むことで金銭的余裕がなくなり、風俗やパパ活に手を出すことは社会問題にもなりつつあります。
パパ活は危険ですし犯罪ですが、風俗はこの世に必要な職業だと思いますし、否定は出来ません。ですが、そうやって苦しみながらオタクをする人は減って欲しいな…と思っています。推される側の運営さんもこの問題についてはきちんと知り深く考える必要があります。特に男性は借金している方も多いらしく、「推し依存症外来」とか必要だと思います…! あったら絶対流行ります。
――みやびたちはなぜここまで身を削って推し活をするのでしょうか? 純粋に推しのため? 「推し」からの承認欲求のため? どのようにお考えですか。
承認欲求は凄くあると思います。私もライブで推しを見に行っているはずなのに「見られたい」と思われるようになったりして、その時は本当に苦しかったです…でもそれは当たり前の事で与えれば与える程見返りを求めてしまうんですよね。その見返りが何なのかによって推すスタンスって変わると思います。
今はSNSの普及の所為か、推しに積んだ人が偉いという風潮があって、それがどんどんエスカレートしている一面もあります。お金を出すって凄く大事な事なんですが身の丈に合っていないお金の出し方は身を滅ぼす事にもなるので…。
――みやびにとって衝撃だったミク君の脱退。実際にも、アイドルの脱退や不祥事、2次元キャラの死亡など「推しとの別れ」はあり得ます。オガワさんはどのように受け止めるでしょうか。
私は失恋と一緒で時間が解決するしかないと思っています。新しい恋愛をするように、新しい推しを見つけるのも良いと思います…。少なからず異性の推しを応援していると疑似恋愛的な感情を受けていると思うので(同性の推しだったり全く恋愛感情ない人も勿論いますが)。
SNSにおける「マウント」の存在
――SNS全盛期と共に生まれた「推し」文化についてどう考えていますか? これまでのいわゆる「オタク」文化とは何が違う? または何が同じだと思いますか。
少し前述しましたが、推しに対する愛が私はこんなに大きい! と発信出来るようになった事で、オタク同士のマウント大会になってしまうような界隈もあります。その点昔の方が純粋なオタクが多かったんじゃ無いでしょうか。マウントはいつの時代もあると思いますが…。
その代わり、SNSやネットによって色んな情報を手軽に入手出来ることによってライトなオタクも増えてますよね。昔だとオタクするにも凄く行動力が必要だったんじゃないかなと思います。
――「推しが辞めた」でこれから描きたいものやテーマ、投げかけたいこと。今後の展望などをお聞かせください。
「推しが辞めた」はオタク達が崩壊に向かって行きますが、一番伝えたい事は「推しがいるって素晴らしい」という事なので、それを軸に物語を展開して行きたいと思っています。
オタクも推しも幸せな世界をいつも願っています。物語の展開的に全く説得力無いですが…!
私自身オタクで良かったと常日頃思っているので、それを伝える事が出来たら嬉しいです。
掲載:https://news.yahoo.co.jp/articles/d5268b20b35ae2e938e6d0f167b84c91de6cbf90?page=1
オガワサラ/福岡県出身。DAYS NEOへの投稿をきっかけに、2020年ヤングマガジン38号に読み切り『pm7:20』が掲載。その後、第83回ちばてつや賞ヤング部門にて、『わたしのかみさま』が優秀新人賞を受賞。2021年6月からコミックDAYSにて『推しが辞めた』の連載を開始。