1月15日、首都圏の1都3県を対象に出された2度目の緊急事態宣言から1週間が経つなか、メイドカフェに代表される秋葉原の“コンセプトカフェ(通称コンカフェ)”は、20時以降も大いに賑わっていた。
「時短要請に応じた“行儀の良い店”ほど、バカを見るんです」
そう話すのは、秋葉原にあるコンカフェのオーナーだ。
■「6万円ぽっちで閉めてたら大損ですよ」
「去年の4月に出た1度目の緊急事態宣言の時、秋葉原のコンカフェのほとんどは1カ月休業したのですが、一方で普段通りに営業していた店舗がとにかく大盛況で、1カ月の売り上げが1.5倍ほどに伸びていた。僕の店も6月に営業を再開したらお客さんがすごくて、月間売り上げ800万円という史上最高記録を達成。7月以降もその数字は落ちず、毎月同じくらいの売り上げが出るようになりました。他の店も軒並み景気が良いみたいで、月の売り上げが2000万円を超えたとか、2倍になったとかそういう話で持ち切りです。
2回目の緊急事態宣言でお客さんは確かに減りましたが、深夜まで営業してますし、休日は満席になります。今回はほとんどの店がオープンしているので“緊急事態”という雰囲気はありません。こんな大チャンスに、協力金6万円ぽっちで閉めてたら大損ですよ」
外出を控える人が増え、2020年は飲食店の倒産が史上最多の780件に到達した。そんな中で、なぜ秋葉原のコンカフェだけが売り上げを伸ばしたのか。
「これまでコンカフェのお客さんは、“コンカフェオタク”ばかりでした。それが緊急事態宣言で銀座や新橋のガールズバーが次々と店を閉めた。それが功を奏して、『女の子と楽しく飲みたい』というサラリーマンがわざわざ秋葉原まで来てくれることが増えたんです。
他にも、地下アイドルの追っかけをしていたようなアイドルオタク層が増えました。地下アイドルのライブなんかも軒並み中止ですからね。『会って話せるかわいい女の子』という意味ではコンカフェと地下アイドルは同じです。もともとここ数年の秋葉原は“オタクの街”というより“夜の街”になっていましたが、コロナでそれが加速した印象があります。メイド服はメイド服でも、最近の衣装は胸元の露出が激しい店舗が増えて、ほぼ風俗街になりつつあります」(同前)
■ターゲットはオタクよりも……
確かに、現在でも秋葉原の街を歩くと等間隔でメイド姿の女の子がビラを配っている。緊急事態宣言下でも、その数は減っていない。20時を超えて店舗の電気が消えても、ビラ配りが続いているということは営業も続いているということだ。
「秋葉原には通称“メイド通り”と呼ばれる通りがあって、昼から夜までいつ行っても15人ほどのコンカフェ・キャストが道端に立ち、通行人に『メイドカフェいかがですか?』とビラを配っています。実はいかにもオタクというお客さんより、若くてノリが良い大学生くらいの人が来店につながりやすく、メインターゲット。逆にオタク度が強そうなお客さんは、来店につなげるのが難しい。そのかわりに、リピートしてくれる率は高いのです」(同前)
1店舗で月に1000万円近いという高水準の売り上げを、彼らはどうやって達成しているのか。
「コンカフェと言っても“メイド”だけではなく、“忍者”や“病院”などテーマは様々。ただ、違うのは衣装や接客くらいで、システムはどの店もほとんど一緒。1時間3000円くらいの料金で飲み放題、別料金でフードや女の子の飲み物を頼むという店が多いです。利益が大きいのは、キャストの女の子たちにご馳走するシャンパンや、ツーショットチェキを撮影できるといったメニュー。価格設定はいろいろですが、5000円あればそれなりに遊べるので、キャバクラやガールズバーよりずっと安いのです」(同前)
■「VIP席ではキャストの胸にチップ」
多くのコンカフェは「飲食店」として業種登録しているので、同席してのサービスは基本的にない。しかし、「できるだけ近くで独り占めしたい」という客のニーズをくすぐる接客方式が取られている。秋葉原の人気コンカフェのキャスト・A子さんが巧妙な営業手法を明かす。
「テーブル席よりカウンター席の方がキャストと話しやすいので人気で、指名したキャストと1対1で話せる“VIP席”は真っ先に埋まります。うちの店のVIP席では、チェキやドリンクを注文する時に、キャストの胸の谷間にチップを挟めるんです。全くソーシャルディスタンスではないけど、コロナ禍でも大人気ですね。この前の3連休(1月9日~11日)も、VIPは常に満席でした。3日間続けて通って、VIP席で140万円を遣ったお客さんもいましたよ」
客に黙って食事をさせる「黙食」を多くの飲食店がコロナ対策として取り入れている昨今、会話を楽しむためのコンカフェでは、かなり近い距離での接客が行われている。対策は万全とは言えない状況だ。
「アルバイト開始時に必ず消毒やうがいをして、営業中はフェイスシールドをしてますけど、対策はそれくらいですね。店内はどうしても“密”になるし、顔が見えないのでマスクもNG。そんな状況なので、キャストの中でも親から出勤を禁止される子も多くて、うちの店は30人のキャストの半分くらいがお休み中です。ただお客さんもコロナを気にしてる人はいなくて、むしろ近づこうとする人の方が多い(笑)。中には、25時の営業終わりにキャストの出待ちをするお客さんもいますよ」(同前)
■新規出店を狙う会社も
秋葉原の盛況ぶりは「夜の街」業界ではすでに知れ渡っており、コロナ禍まっただ中の昨年9月には、群馬でキャバクラを展開していた会社が秋葉原にメイドカフェを新規オープンしている。他にも、新宿・歌舞伎町でホストクラブを展開するグループ会社や、銀座のクラブを運営していた会社も秋葉原進出を目論んでいるとも言われている。「そういった競合店舗が増えることで、なおさら店を閉められない状況を生んでいる」と話すのは、別のコンカフェを経営するオーナーだ。
「もちろん感染拡大を防ぐために時短営業にして協力金をもらうという考えもあるのでしょうが、それをしたって、キャストの女の子たちが他の店へ移籍してしまうだけなんですよ。お客さんは店でなくキャストについているので、店にとって移籍はダメージが大きい。だから休むわけにはいかないんです。
『働きたい』という女性の応募も増えていて、年が明けてからは1日平均5人以上から問い合わせがあります。リモートワークや時短勤務で収入が減った一般企業に勤める女の子が、『空いた時間で稼ぎたい』というケースがほとんどです」
■「うちの店でキャストがコロナにかかっても報告せずに営業を続けるでしょうね」
この稼ぎ時を逃す手はないと考えているコンカフェのオーナーたちと、本業の減収を補いたいキャストの女性たち。利害が一致している彼らの言葉には、「コロナ対策など二の次」という本音が見え隠れする。
「正直に言えば、うちの店でキャストがコロナにかかっても報告せずに営業を続けるでしょうね……。本人が体調が悪い間はさすがに休んでもらいますが、店もキャストも『できるだけ早く復帰したい』という気持ちは同じ。クラスターが発生した店もあると聞きましたが、公表したという話は聞きません。店を閉めれば売り上げが落ちるし、女の子たちも去ってしまうので、仕方のない判断だと思います。今の秋葉原はコンカフェをオープンしたがる人が殺到する激戦区で、物件すら見つからない状況。いま稼がずにいつ稼ぐのか、という気分ですよ」(同前)
1月18日からようやく国会が始まったが、政府は新型コロナウイルス対策の特別措置法について、緊急事態宣言のもとで時短や休業の命令に応じない事業者には、50万円以下の過料を科すなどとする改正案をまとめた。だが、この改正案が施行されるまでに少なくともひと月はかかる。罰則規定には賛否両論飛び交うが、まず国会議員や評論家は“現実の秋葉原”を覆面視察すべきなのかも知れない。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
掲載:コロナ禍の秋葉原、風俗街に変貌? メイドカフェは衣装過激化、胸元にチップ挟む客も|ニフティニュース (nifty.com)
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