歌舞伎町を中心に存在する「ぴえん系女子」は、10代~20代の女性の中ではファッションアイコンのような位置づけにある。歌舞伎町のぴえん系女子の中には昨年、世間を賑わせた「トー横キッズ」に所属していたり、ホストを推していたり、パパ活に励んでいたりとさまざまだ。日本のZ世代、もとい「ぴえん世代」の特徴やわれわれ大人に求められる彼女らとの接し方などを『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)の著者である佐々木チワワ氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
若者の流行語にもなった 「ぴえん系女子」とは
2019~2020年にかけて発表された、「JC・JK流行語大賞」「ギャル流行語大賞」「インスタ流行語大賞」や、2021年の「Z世代が選ぶ2021上半期トレンドランキング」でもランクインした「ぴえん」。泣いているさまを表す擬態語「ぴえーん」を省略したワードであるが、現在、その意味は限りなく広がっている。
「明日テストだ。ぴえん」「彼氏が優しかった。ぴえん」といった具合に、文脈によって「悲しい」「うれしい」など、意味は多岐にわたる。このような「ぴえん」の活用法は一昔前にはやった「卍(まんじ)」や「ヤバい」、古語の「おかし」と似ている。
こうした「ぴえん」というワードを軸にして、歌舞伎町に通うZ世代や当地の「推し」カルチャーなどにアプローチしたのが、現役大学生ライターの佐々木チワワ氏。自身も15歳から歌舞伎町に足を踏み入れ、現在にかけて4年間ホストクラブに通っている彼女は、「ぴえん系女子」についてこう語る。
「病んだ言動をしていそうな女子は『ぴえん系女子』と呼ばれます。地雷系メークで、ストロング系アルコールをストローで飲みながら、(推しメンを称賛するという意味の)『推ししか勝たん』と言っている女子が、まさにそう。『ぴえん』はファッションや行動様式、発言も包括したステレオタイプのイメージとなりました」
漫画で「ぴえん系女子」が描かれたり、雑誌でファッションや言動の特集が組まれたりするなど、徐々に「ぴえん系」の人気は高まっていった。さらに、「歌舞伎町の持つ“闇”とぴえん系女子がもつ“病み”が融合した結果、過激化することもある」(佐々木氏)といい、リストカットや市販薬などを過剰摂取するOD(オーバードーズ)、大量の飲酒や喫煙、風俗や水商売で働くことでさえファッションの一部として行う人もいるという。
ボロボロになりながら 「推し」に貢ぐ自分がエモい
こうしたぴえん系女子が集う歌舞伎町で、近年まれに見るほど高まっているのは「推し」カルチャーである。
「以前も、推しのホストやメンズコンカフェ(コンセプトカフェ)のキャストに多額のお金を使う人はいましたが、近年は未成年や20代前半の若い子にもその文化が広まっています。『推しは推せるときに推せ』という言葉がすごくもてはやされ、推しに貢ぐ額が青天井になっています。稼ぐ能力もない未成年でも『推すために稼がないと』という思考になっているケースがあるのです」
佐々木氏によれば、18歳以下でも入店できる歌舞伎町のコンカフェには数百万円のお酒が置いてあるという。つまりは、推しのキャストのためにその額のお酒を誰でも注文することができる仕組みになっているわけだ。
「同世代の女の子が風俗で稼いだお金を推しに貢いで、彼に優しくされている場面を見れば、まだ経済力のない女の子は『私も風俗しなきゃ』と思ってしまう。実際に、『推しのために春からデリヘル嬢します』とプロフィール欄に書いている高校3年生のTwitterアカウントもあるほど。世間でも『推し活』が市民権を得ていますが、若い子が『推しにお金を使えば使うほどいい』と考えてしまうのは、少し危険だと思います」
若く、キャリアのない女性でも稼げる職業の一つが風俗や水商売。歌舞伎町という土地柄もあり、仕事へのチャンネルは多く用意されている。ホストクラブなども多い歌舞伎町と、推しカルチャーの親和性はかなり高いのだ。
はたから見れば、健全ではないと思ってしまう構造だが、佐々木氏によれば、そこに「エモさ」を感じているぴえん系女子もいるという。
「『エモい』とは『エモーショナル』から派生した若者スラングで、情緒的な感情を表します。我が身を犠牲にして、推しに貢ぐ行為をエモいと感じる文化があり、推しのために身を粉にして働くというのは一つの美談になります。その中で、ボロボロになっている自分自身もエモいと感じるのです。個人的には、本人が幸せならばそれはそれでいいと思います。なんの目的もなく生きるよりは、誰かのために生きがいを求めている彼女らのほうが人生を楽しんでいるように見えますからね」
誰かを推すことで 自分の存在意義を確かめている
ただ、そうした推しカルチャーに潜む、コミュニケーションの問題も佐々木氏は指摘する。
「推しは極論を言えば偶像崇拝なので、その人の良い面を自分で作り出し、それ以外の内面を見ていない場合が多い。例えば、推しが自分の意に沿わない言動をしてしまうと『推し降りる』と言い、勝手に幻滅して拒絶してしまうのはホストと客ではよくある話。ただ、この構造は歌舞伎町やホストと客に限らず、日常生活の人間関係にも影響すると思います。あまりにも推しカルチャーのマインドになっていると、友人関係などにおいても、ささいなことで『推し降りる』と似たような拒絶行動を取るケースもあります」
昨年は「推し」が流行語大賞にノミネートされるなど、その文化は広く市民権を得ている。しかし、推しカルチャーが果てしなく高まっている歌舞伎町を知る佐々木氏は、その暗部にも目を向けるべきだと話す。
「商業的に『推し』が推奨されている世間のムードも、上記のようなことを加味すると危険な側面がある。例えば、推しに貢ぐ金額にこだわってしまうと、自分の価値を貢げる額という『値段』でラベリングしがちです。ホストクラブに行く女性の中には『私は月100万円使えるよ』と最初から自分のステータスを金額で提示する人もいます。これだけ貢げるから大事にしてね、という思考に陥ってしまうのです。歌舞伎町や推しカルチャーに染まれば染まるほど、値段で自分をラベリングし、お互いに数字だけの端的なつながりになってしまうケースもあります。さらに、『あの客よりもお金を使ってやる』という競争にもなるので、際限がありません」
ただ、佐々木氏はこうした推し活にハマる子どもたちへの理解を大人には求める。
「歌舞伎町に集ったり、推し活に励む子は居場所が欲しかったり、何者かになりたかったりする気持ちがあります。幼い頃からにSNSに触れ、自分よりも才能のある国内外の同世代を見て育つ中で、常に『自分にしかないもの』や自分の存在価値を探してしまうのも無理はありません。それらは簡単に見つかるわけでもないので、誰かを推したり、推されたりすることで存在価値を確かめている“ぴえん”な背景があるのです。大人は、そんな若者を否定したり、勝手に決めつけたりするのではなく、理解する姿勢を少しでも持ってほしいです」
実際、トー横キッズと呼ばれたかいわいの中には、ネグレクトや過干渉など家庭や親との関係にトラブルがあった子どもたちもいたという。
「もちろん、若いから間違った言動をすることもありますが、上から目線で正すのではなく、若者たちの文化や価値観を理解した上で導いてほしいと思います。上から目線の説教は、おじさんの“自己満”なので、それに子どもたちを巻き込まないでほしい」
「ぴえん」な言動を一笑に付さず、理解する姿勢が求められるのだろう。
掲載:https://news.yahoo.co.jp/articles/af36045c703672f110cf22ff74d57e23c9818c8c?page=1
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