コロナ禍にも関わらず、2021年は、歌舞伎町歴代最高記録である年間5億2000万円の売上を記録したホストが登場した。1億円プレイヤーのホストはほかにも続々と現れ、空前のホストバブルがやってきている。そのバブルを支えるのは、かつてのホストと疑似恋愛を楽しむ大人の女性ではなく、ガチ恋ではなく、会いに行けるアイドルとしてホストを推す若い女性たちだった。15歳から歌舞伎町に通うライターの佐々木チワワ氏が、ホストバブルを支える「推し文化」の実相についてレポートした。【全3回の第3回。第1回 第2回を読む】
ホストを推す女性客が増えるのに伴い、ホスト側の売り出し方も変化している。
「昔みたいに洗脳したり、テキトーな売上のあげ方をしていたらボロが出るようにはなった」
そう語るのは今年で歌舞伎町歴10年目になるという有名ホストのタクヤ(仮名・34)だ。
「今はSNSの時代だから、女の子に酷いことしたり、嘘をついていたらすぐに晒される。だからより価値があるホストはドンドン売れていくし、売れないホストは全然売れない。とはいえ、今は上が過去最高に売れているのでホストの価値自体も上がっている。お金を使う前提の女の子が増え、ホストは今が一番稼ぎやすいんじゃないですかね」
性や容姿を売れるのは女性、という価値観は廃れ、整形や化粧に力を入れ接客業に流入する男性が増えている。そんな容姿の追求の裏で、「接客の形骸化」が起きているという。
「今は適当な接客をするホストでも、SNSなどで“推されて”しまえば簡単に売上があがっちゃうのが悩みどころ。従来の『普通の男よりも男らしく、カッコよくエスコートしてもてなす』というホストの形が失われている気がします。お客さんサイドも昔よりも酒の味にうるさくなくなって……。
無理に飲ませてくるお客さんもいなくなったし、なんかホストのほうが主役ですよね。女がカネを使って主役になって男に言うことを聞かせる場所だったのが、自分の推しのホストをステージに上げて輝かせることに躍起になる子が増えたというか。女が男を立てる、みたいな感じがより強まった」(タクヤ)
男女平等、ダイバーシティなどと謳われるなか、歌舞伎町は多様性という面では学歴や過去は不問で働ける良さがある。その一方で根強く残る価値観がエイジズム(年齢差別)とルッキズム(外見差別)である。ホストの間では「俺は売れない頃はどんな女でもガッついた」ことが美談にされる。歌舞伎町でカネを落とす女性の大半が夜職なため、「稼げそうな容姿と年齢」が絶対的な価値観として存在するのだ。
一番頑張ってるのは私
歌舞伎町の女はある種「男を立てる女」へと逆行している。そしてそこには、推す達成感の裏側にある「自己犠牲」を伴っているケースが多い。
「今は全部終わっちゃったけど。私も担当も全力で毎月ボロボロになるまで突っ切るあの感じが、最高に楽しくて……」
目を細めて懐かしそうに語るのはアミ(仮名・19)。1年間指名していたホストが卒業し、今はどこのホストクラブにも行っていないという。
「担当と出会ってから世界のすべてが変わったんです。応援するって決めて1年でガールズバー、メンズエステなど、どんどん稼げる仕事に移って行って。今月は80万稼げた、じゃあ来月は100万頑張ってみよう、みたいにどんどん一緒に目標を決めて、達成できたら嬉しくて。
初めて1日10万円稼げた時は担当に思わず電話しちゃいました。『自慢の姫だよ』って言われるのが嬉しかったんですよね。担当のために一番頑張っているのは私って思いたくて。金額的にも、精神的にも。結局1年で1000万近く使って、あんなに働いたのに貯金はゼロ(笑)。でもいいんです、担当がいなかったら稼げてないお金だから。4月から昼職に戻るとして、それまでちょっと働いて整形でもしようかなと思ってます」
あっけらかんと語るアミだが、ホストを卒業した担当に未練はないのだろうか。
「もっと頑張ればよかったかな、とか思いますけど。でもホストとしての彼を最後まで推せたんでいいんです。もう彼はただの一般人だから、私にとやかく言う権利ないし……。これだけしんどい思いして、またイチから頑張りたいって思えるホストに出会える気はさすがにしませんね。風俗も格差の加速でドンドン稼げなくなるだろうし。
ただ、全部の時間をお金に換算しちゃったり、稼げることに固執するような歪んだ価値観と金銭感覚が残ってしまったのだけが不安です」(アミ)
コロナ禍による寂しさが原因と一概には言えないが、女たちが大金で「会えるアイドルとのストーリー」を買うのと同様、男たちも性的行為にストーリーとロマンを求める者、単純に欲求を解消するだけの者の二極化が激しい。「風俗じゃないスレていない素人の女の子と、段階を踏んで仲良くなりたい」といった願望が満たされ、金額も交渉次第なパパ活も、人気を博している。
最近では風俗嬢もホスト同様、SNSの利用が必須とされている店舗も増えてきた。ホストと違い勤務時間に応じて決まった金額での仕事である風俗嬢が時間外にする仕事として写メ日記の更新、常連客への連絡に加えてSNSの更新が追加されたのだ。「昔はこんなことしなくても稼げたのに」と、ベテラン風俗嬢からは嘆きの声が上がっている。
こうした歌舞伎町の現状を分析すると、今の世の中は男女問わず「傷つかずに手間を省いて、自分の理想に近いストーリーを消費したい」という願望に溢れていると感じる。対等なコミュニケーションをとるのが苦手な人はしばしば、相手を偶像化してしまいがちだ。
そうしたコミュニケーション能力の「格差」が、今のホストバブルを支える「推し文化」の中心にあるのかもしれない。
【プロフィール】 佐々木チワワ(ささき・ちわわ)/ライター。2000年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学在学中。15歳から歌舞伎町に通い、それをもとに「歌舞伎町の社会学」を研究する。著書に『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)。
※週刊ポスト2022年3月11日号
掲載:https://news.yahoo.co.jp/articles/500b3be1965591b38d63729f0ba01ca6bd2133d6?page=1
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