歌舞伎町に誕生した「ぴえん系女子」、「トー横キッズ」、「自殺カルチャー」、「新世代ホスト」、「SNS洗脳」……。なぜ未成年たちは深い闇に落ちてしまうのか――。
そのリアルを実体験と寄り添う取材で書き上げたのが現役女子大生ライター・佐々木チワワ氏による 『ぴえんという病 SNS世代の消費と承認』 (扶桑社)である。ここでは同書から一部抜粋して、Z世代のリアルを紹介する。
ぴえん女子を使った記録塗り替えゲーム
ホストクラブが接客を楽しむ場ではなく、推しの記録を上げ、歌舞伎町の記録を塗り替えるゲームとなっている一面が近年かなり強くなってきている。2021年、おそらく歌舞伎町史上初の4億円プレーヤーが生まれるのではないかと言われているが(2021年、4億円をはるかに上回る5億2000万円プレーヤが生まれた)、売り上げ以上にインフレが顕著なのは「指名本数」という評価制度とそれに伴う記録だ。
ホストクラブの月間の記録は主に「売り上げナンバー」と「指名本数ナンバー」に分かれる。売り上げナンバーは文字通り1か月にどれだけ売り上げたかであり、指名本数ナンバーは1か月に何組の客を呼んだの記録である。1人の客が25営業日すべて来店した場合か25本。25人の客が月に1回ずつ来店しても25本である。こうした売り上げと本数の現状の順位は裏局域であるバックヤードに常に張り出され、ホストが競争心を高める。
20時~25時の5時間の営業で、1日10人の客を呼んだら単純計算で1人当たりの接客時間は30分。ヘルプや初回の時間を除けば15~20分程度しか接客ができないことになる。しかし、現在の歌舞伎町には指名本数が400本、600本、700本という記録をたたき出しているホストが存在する。700本などは25営業日で割っても1日に28人の客を呼ばないと達成しない数字だが、どのようにして行われているのか。
他人に「奢る」ことで本数を稼ぐホスト
「フォロワーへ 私の友達が無料でクイック連れて行ってくれるらしいのですが、行きたい方いませんか? ちなみに今日で、場所は歌舞伎町です。いたら私にリプもしくはDMください。その子につなぎます。担当ホストにただ本数つけてあげたいだけの子なのでいい奴です……」
これは2021年10月31日にツイートされたものである。このように客がSNSや友人経由で他人に「奢る」ことで本数を稼ぐ事例が近年では起きている。さらに、歌舞伎町の路上で客が道ゆく女の子に声をかけて、「本数つけたいのでキャッシャー(レジ前)に一瞬でいいので来てくれませんか?」と声をかけて本数をつけるケースも存在している。指名本数によるナンバーという名誉に加え、本数バックや目標バックなども存在する。本数の記録は持てるならできるだけ多くもっておきたいという考えのホストが最近は多い。
指名本数は元来、売り上げだけでなくより多くのお客に愛されているバランスのいい接客能力の高いホストという評価軸のひとつだった。しかし、こうしたチートともいえる記録の伸ばし方を実践するホストが増えたことで、その意味を失いつつある。ホストクラブで年間毎月1000万円以上を売り続け、指名本数も最大150本近くの記録を保持する、歌舞伎町でも上位数パーセントに入る売れっ子ホストに話を聞いた。
「月間指名本数700本とかやめてほしいよね(笑)。俺は本気でやって150本。それ以上は無理。一回本数にこだわって頑張ってみたけど、かなりキツいと思った。それでもグループの年間のランキングには入るから、ホストのキャパはそのくらいじゃないかな。俺は指名で来るお客様が30人くらいいて、毎日来る子から月末だけの子を合わせて毎月100本前後。そこから頑張って150本。売り上げはあおったらどうにかなるけど、本数ばかりはどうにもならないと思ってたらこんな売り方も増えてきて……」
近年の歌舞伎町バブルに関してはこう述べている。
「俺はイベント月じゃなければ、一番使うお客様で200万~250万円くらい。そのほか100万以上使うお客様が4人。残りの数十万使うお客様で1000万の数字をあげているんだけど。イベントとかで500万ならまだしも、常時その金額を使い続けられる子が増えてきて怖いという感覚はある。特にぴえん系女子には無理する子が多い。1000万とか一人の子に使うよ! って言われたら怖いもん。断っちゃうかも」
別の売れっ子ホストも自分の売り上げに対して1人が使う金額が3割を超えないように気をつけているという。「ある程度の売り上げを自分1人で支えているとなると女の子が優位になってしまう。そこをコントロールすることも含めて自分の仕事」という内容の発言をしていた。
こうしたホストがいる一方で、ほぼ一人の客で売り上げを立てている一本釣りホストや、売り掛けに失敗して“飛ぶ(逃げる)”ホストもいる。この売り掛けという制度が、ホストたちの稼ぎを暴騰させる一面もあるのだ、が。
女性もホストも陥る売り掛け地獄
売り掛けとは、いわゆる「ツケ払い」のことである。ホストクラブでは売り掛けでの飲食が一般化しており、給料日後である翌月の2~5日に、使った金額を支払うという仕組みだ。10万円しか財布に入ってない場合でも、指名ホストの誘いでシャンパンを入れて30万円の会計をすることができる。その場合、現金で10万円を支払い、残った料金は翌月の決められた日までに入金すればいい。基本的に売り掛けは指定日までに直接店舗にもっていく必要性があり、「売り掛けを入金したら担当切るもん! ぴえん!」と宣言したホス狂がそのまま店にずるずると引き込まれ、結局、売り掛けを払いに行ったのにまた売り掛けをこさえて帰るといった事態が度々起こる。
風俗で働くホス狂のなかには、月初めに200万円などの売り掛けをし、1か月かけて働いてその金額を稼ぐタイプも存在する。「売り掛けがないと働けない」と話すぴえん系女子も存在する。「稼いで飲む」のではなく、「飲んでから稼ぐ」というスタイルが確立しているのだ。売り掛けをするとその金を払うまで担当ホストとの関係性が切れないこともあり、あえて売り掛けをしたりするケースもある。売り掛けをした場合、覚書として売り掛けの金額を青い伝票、通称「青伝」をもらうことになる。これをホス狂の業界では「伝票はラブレター」「運命の青い糸」などと呼ぶ。
もしもお客が売り掛けを支払えず逃げてしまった場合、ホストが自腹で店舗に支払うことになる。見えや狸の皮算用でむちゃな売り掛けをした結果、給料がゼロになるどころか店側に借金をするホストも存在するのだ。しかし、この売り掛けという不安定なシステムがあるからこそ、ホストたちは破格の売り上げを立てられるのも事実である。
「どうせ立替」という烙印
売掛金をホストが自腹で支払い、客が分割で返済していくことを「立替」と呼ぶ。立替ばかりで現金がないホストを「立替ホスト」といい、許容を超える立て替えが積み重なると、ダサいホストのレッテルを貼られる。「立替」のイメージがつくと、その後いくら売り上げても「どうせ立替」という烙印を押され、カリスマホストへの道は遠のいていく。
「立替」によって形の上では1000万円を売り上げたはずなのに給料が80万しかもらえなかったホストもいるくらいだ。
ホストもそこでお金を使う女性も、数字や肩書、立場、関係性という不安定な世界での虚構を維持するために日々奔走しているわけだ。現代の「繋がれる推し」文化のある種最上位に位置し、承認欲求から誇示消費、エゴすべてを吸い取るのがホストクラブという存在なのだろう。もはや一部のホス狂いにとっては楽しむ場というよりも戦場と化している。
〈歌舞伎町「語句説明」〉
趣味の女
ホストクラブ用語。店で少額しか使っていない、もしくは店に行かなくてもホストに「趣味」のように相手にされている女の総称。ホストからしたら「店に来てもこなくてもいいどうでもいい存在」だったりもする。「お金を使ってないのに相手にされている」という優越感と、けれど本命の彼女にもなれない絶妙なポジション。いずれにせよ、シッカリ店で金を落としている客からすれば嫌な存在である。趣味を優先して客の管理ができないホストは5流。
映え
「SNS映え」「インスタ映え」など、その場の原体験よりも「写真に残したときにいいかどうか」という基準でものを選んでいるときに多用される表現。一時期、おいしそうなキラキラした見た目だけど実際はそうでもないスイーツなどが、写真を撮ったらすぐに捨てられていて問題になった。現実世界よりも、SNS上で「どう見えるか」というまなざしを受けての行動なのがぴえん世代らしい。
掲載:https://news.yahoo.co.jp/articles/8f82488b2e1d7263bab0b2fd817402c64e445aaa?page=1
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