どうしてもお金が欲しかった。別に何かに使う予定はなかったんですけど
新型コロナ感染拡大の影響で勝ち組と負け組の格差が著しく拡大した風俗業界。コロナ前と変わらぬ売上を維持する女性がいる一方、開店から閉店まで待機しても客が付かない女性もいるというありさまとなった。風俗で稼げなくなった一部の女性は、新しい仕事を求め引退。しかし、いわゆる夜の仕事から別の仕事へはなかなかうまく順応できないようだ。騙されたり違法な行為に手を染めそうになったりと、更なる困窮に追い込まれるケースが散見される。彼女たちは現在、どのような暮らしを送っているのか。当人たちに話を聞いた。
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「『ひととき融資』に騙されました……」とAさんは力なく笑った。「ひととき融資」とは、性的な関係を対価に金銭を貸し付けるもので昨年逮捕者が出たことで一時話題となった。その際、いたる媒体で「契約は無効」とアナウンスされたがインターネット上ではまだ募集や応募があるようだ。
30代前半のAさんは新型コロナの流行で風俗店に在籍しても仕事がないことから、前職の介護職に復帰。手取りはおよそ15万円だという。一人暮らしのため生活できなくはないが、貯金は皆無。コロナ前は20代半ばと称して風俗店に在籍し、指名ランキング上位の常連だった彼女にとって、金銭的な余裕がないというのは尋常でないストレスだったと振り返る。
そんな時、偶然目に留まったのがSNS上にある「ひととき融資」の募集だった。検索すると全国各地で募集をしている。そこで自分の地元で募集している男性を見つけた。Aさんがコンタクトを取ると即座に返信。10万円の融資の条件は性行為とその撮影だった。
1万円札は2枚だけで残りは1万円のサイズに切ったコピー用紙
「風俗で働いていたのですから、撮影されることのリスクは考えました。でも、どうしてもお金が欲しかったんですよね。別にそのお金を何かに使う予定はなかったんですけど」(Aさん)
指定されたホテルで相手の男と会い、免許証のコピーを渡して借用書にサイン。融資金の10万円は封筒に入れてあり、テーブルの上に置いてあった。性交渉を終え、Aさんは封筒を自身のバッグに入れ男とはホテル前で別れた。
自宅に戻り、封筒を開けると1万円札は2枚だけで残りは1万円のサイズに切ったコピー用紙。連絡先に電話してもメールしてもなしのつぶてだった。撮影された動画が流出していないか不安になり、毎日のようにアダルトサイトを巡回して自分に似た動画が出てくる度に恐怖心で胸が締め付けられているという。
Aさんは「お金がないストレスで、あの時の自分はどうにかしていたんでしょうね。警察に相談しようとも思いましたが、個人情報を相手に握られていると思うと報復が怖い」と話した。
シングルマザーのBさん(30代半ば)は風俗から足を洗い、コンビニなどでアルバイトをしながら小学校1年生になる長女と二人暮らし。コロナ前にSNSなどでつながった常連と会い金銭のやり取りをしている。
そのうちの一人に寝物語で生活が苦しいと愚痴をこぼしたところ、常連客から「子供が好きな知人がいる。自分を介して娘の動画を撮れば最低でも5万円はあげられる」と言われた。もちろん児童ポルノ禁止法に抵触する犯罪行為だ。
風俗店で働いていた時なら鼻で笑って黙殺しただろうが、最低時給が千円を下回る地方でパート暮らしをする現在は月収が十数万円。家賃は安くても近所のスーパーへ行くにも乗用車は必須で、諸々の経費はかかり二人が暮らしていくには楽でない。
「もしもお金に困ったら、その時には」と…
既に風俗店に勤務していた時代に貯めた貯金を取り崩し、子育てを考えると仕事を増やす訳にも行かず途方に暮れていた時であった。いつもなら客に自身の悩みを打ち明けることはなかったのに、自分が考えている以上に金銭で追い詰められていると感じた。
娘はまだ小学1年生。風呂に入れている際にでも撮影すれば傷付くこともないのではないか。子供に不自由させたくないからこそ離婚後、風俗店で働いたのにその子供をわずかな金銭のために売るような真似をしていいのか。散々思案している時、自分の横で無邪気に着替える娘の姿を見て我に返った。もし子供の動画が流出してそれが周囲に見つかった場合、取り返しのつかないことになる。子供の将来が破壊されることは確実で、児童ポルノだけは手を出してはいけないと思い至った。
「お金は確かに欲しいけれど、そのお金はあくまで子供のため。子供を売るのは、やはり違うと思ったんです」(Bさん)
常連客を通じて子供の動画の買い取りを打診した相手は大層落胆したそうだ。そして、謝礼金を微妙に積み上げた。8万円。今のところ断っているが、打診した相手からは「もしもお金に困ったら」と言われている。子供が将来傷付くことは絶対に避けなければならない。児童ポルノは論外として別の方法を模索するが、今のところ妙案は浮かんでいないという。
収入の減少から将来への不安があるのは理解できる。しかし、彼女らの話には家族や福祉というものが一切登場しない。特に生活保護など福祉の情報は、インターネットで検索すればすぐ出てくる。取材した女性はともにスマートフォンを持っていた。情報を調べたらすぐ見つかると説明したが、彼女らは揃って「そういったものには頼りたくない」と拒絶。
将来や子供の健全な成長を考えるのであれば、福祉に頼ることは選択肢にあってもよさそうなのに検討することさえ拒否しているようだった。
『稼げない』『金がない』というのは恥じるべきことに感じるようになります
こうした風俗経験者の心情についてスカウトマンなどの関係者に訊ねたところ「自尊心の問題だろう」という答えが返ってきた。
元風俗店の店長によると、彼女らはコロナ前は同年代の女性よりも高い所得があったことから稼ぎを重視する価値観になりやすいという。風俗業界に踏み込む動機がほぼ金銭なのだから、その業界に順応するためにも金銭に重きを置くというのはありうるのだろう。
「家族が助けてくれるような環境であれば誰も好き好んで風俗で働こうとは思わないでしょう。経済的に家族など近しい人を頼れないから働くわけです。そうして同年代の友人知人よりも多く稼ぐうちに、『稼げる自分には価値がある』と考えるようになり、『稼げない』『金がない』というのは恥じるべきことに感じるようになります。そういうタイプは間違っても福祉に頼ることはないでしょうね」(元店長)
元店長の推測は上記2人の言動とある程度一致する。どちらも金銭がないことに恐怖心を抱いていた。その不安を解消しようと短慮としか思えない行為で金銭を得ようとして後悔している。福祉に関しても必要以上の拒否反応を示した。無論、全員に同じ傾向があるとは言わないが自身の売り上げによって毎日の収入が変動する業界にいれば、金銭に対する考え方はシビアになるのも当然かもしれない。
都内のスカウトマンは「はじめのうちは働きやすい環境という言葉が女性からは出て来ますが、ある程度仕事に慣れてくると金銭面の話ばかりになりますね」と補足する。
新型コロナによって図らずも仕事を失った彼女らが、数カ月でその価値観を変えることは難しい。
畑中雄也(はたなか・ゆうや)
1980年生まれ。出版社、新聞社勤務を経て現在は食品製造業を経営。
週刊新潮WEB取材班編集
掲載:風俗業界から引退した女性の告白…「ひととき詐欺」に遭った、違法行為への誘惑 | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
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